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ある日、しょうねんたんていだんのぽけっと小ぞうは、ひとりで、さびしいのはらをあるいていました。
ぽけっと小ぞうは、小がっこう四ねんせいですが、ようちえんのせいとみたいにからだが小さくて、ぽけっとにでもはいりそうだというので、こんなあだながついているのです。
のはらには、はやしがあって、そのむこうに、りっぱなようかんがたっていました。
大きな三がいだてのいえです。
ぽけっと小ぞうは、そのようかんが、あまりへんなかっこうをしているので、そばまでいってみました。このへんにはいえがなく、このようかんだけが、ぽつんとたっているのです。
その、れんがのへいのそとをあるいていると、どこからか、「きゃあ」というさけびごえがきこえてきました。
びっくりして、あたりをみまわすと、ようかんの三がいのまどが、一つだけあいています。
十ぐらいの女の子が、そこからからだをのりだすようにして、たすけをもとめていました。ぽけっと小ぞうは、すぐ、ぽけっとから小がたのぼうえんきょうをとりだして、目にあてました。
この小さいぼうえんきょうは、しょうねんたんていだんの七つどうぐの一つで、いつでももちあるいているのです。ぼうえんきょうの中に、女の子のかおが、大きくうつりました。そのかおが、とてもこわそうに、目をいっぱいにひらいて、たすけをもとめているのです。
そのとき、ぼうえんきょうの中の女の子のうしろに、大きな、きみのわるいものが、ぼんやりとうつりました。
あっ、らいおんです。たてがみのある、大きならいおんが、いまにも、女の子にとびつきそうにしているのです。
「きゃあ」
また、ひめいがきこえました。
ぽけっと小ぞうは、いきなりかけだしました。そして、ちかくのこうばんをさがして、そのことをしらせたのです。
おまわりさんは、びっくりして、ふたりづれで、そのようかんにかけつけました。
げんかんのべるをおすと、中から、白いあごひげのあるおじいさんがでてきました。
「わしは、このいえのしゅじんだが、うちには、そんな女の子はいない。まして、らいおんなど、いるはずがない。その子どもは、ゆめでもみたんだろう。はははは」
とわらいとばすのでした。
おまわりさんは、しかたがないので、そのままひきあげてしまいました。
けれど、ぽけっと小ぞうは、どうしてもあきらめることができません。よるになるまで、ようかんのまわりをあちこちあるきながら、もう一ど女の子のかおがみえないかと、まちかまえていました。でも、あのまどは、もうしまっていて、しいんとしています。
よるになると、ぽけっと小ぞうは、もんの中へしのびこみました。
ぽけっと小ぞうは、こっそりと、ようかんのよこへまわっていきました。
すると、一かいの一つのまどに、あかりがついています。のぞいてみると、そこに、さっきの女の子がいるではありませんか。
女の子は、くろいきれで目かくしをされ、さるぐつわをはめられています。そのそばに、くろめがねのわかいおとこが、こわいかおをして、たっていました。
そのとき、もんのそとに、じどうしゃのとまるおとがしました。ぽけっと小ぞうは、
「あっ、きっとそうだ」
とうなずきました。
足おとのしないようにかけだして、もんのそとへでてみると、大がたのじどうしゃがとまっていました。
じどうしゃのうしろの、にもつをいれるとらんくのふたがうまくひらきました。ぽけっと小ぞうは、いきなり、その中へもぐりこんで、もとのとおりにふたをしめました。
まもなく、くろめがねのおとこが、女の子をつれて、じどうしゃにのると、そのまま、どこかへはしりだしました。
あの女の子は、いったいだれなのでしょう。ひるまみたのは、ほんとうのらいおんだったのでしょうか。そして、とらんくにかくれたぽけっと小ぞうは、これからなにをするのでしょうか。